死ぬかと思った事件

いまでは、「のほほ〜ん」と生かせていただいてるぼくも、これまで過去に何度か、「死ぬかと思った事件」がありました。 ほんとはもっとあるんだけどキリがないし、ちょっとオカルトっぽいのもあって、それはきっと「嫌がる読者」も多いだろうから、とりあえず"超自然現象でない理由"で、ヤバかった事件を3つほどご紹介。「UNAさんの記事」読んでたら、思い出しちゃいました。

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●「パリ」睡眠薬事件

21のころの話だ。
ぼくは、イベリア半島でのバッグパッカー旅行を終え、パリ北駅でドイツ行きの夜行を待っていた。 まだ昼前なので時間はたっぷりある。「何をしよう?」 そんなふうに暇をもてあましていたぼくに、親しく声をかけるおじいさんがいた。 ひどくみすぼらしいカッコで体臭もきつい。しかも、フランスなまりのきつい英語のため、何を言っているのか3分の一もわからないが、ぼくの英語もマトモではないから、どっこいどっこいだ。 2週間の旅の終着間際でもあり、それなりに「旅慣れ」していた自負もあったぼくは、「旅の土産話は多い方が・・・」と思い、さっそくおじいさんに誘われるまま、「お宅訪問」させてもらうことにした。 モンマルトルの丘を越え、サクレクール寺院の前で記念撮影などしながら、ポンピドーセンターそばの、「そこ」へとおじいさんの後をついて歩く。 おじいさんは見かけによらず歩くのが早い。きっと若い頃は、軍人だったのだろうと思った。 ぼくは少しあえぎながらも後を追う。 途中、スーパーマーケットに立ち寄り、サンドイッチの材料などを買い込んだ。 支払いはぼくが済ませた。まあ、おじゃまするのに手ぶらじゃなんだし、自分も食べたいと思っていたからだ。
「そこ」はずいぶんと古いアパートで、天井は傾き、床は歩く度に"ぎっ"、"ぎっ"と、大きな音がする。少し力を入れて踏みつければ、カンタンに底が抜けちゃうんじゃないかと思う。 部屋は3つほどあり、思ったより広い。 「サビシイ一人暮らしなんだろうなぁ」と思いながら、ふと奥の部屋を覗いてみた。

心臓が飛び出るかと思った。

「白っぽい少女」がベッドに座り、じぃっとこちらを見ていたからだ。


14〜15歳だろうか?上半身をこちらに向けて座っている。確かに顔はこちらを向けてはいるが、視線に力がない。焦点も合っていない。
「彼女は盲目だ」、と気づいた。
名前をミシェールというその少女は、シルバーブロンドの髪、皮膚は透けるほど白く、がりがりに痩せていた。しばらく陽の光とは縁がなさそうにも見えた。袖のほつれた水色のワンピースがどこか痛々しい。さっきまで死んでいたかのように生気がなく、気味が悪い。
こうして3人の奇妙なランチが始まった。 彼女はぽつりぽつりと、フランス語でおじいさんと話す。おじいさんは「ウィ、ウィ」とうなずきながら、棚から赤ワインを取り出し、グラスに注いでぼくにすすめる。 ぼくは隣りに座っている彼女の手をとって、ツナとチーズをはさんだバケットを手渡してあげた。「メルシー」、と小さく、しかし姿勢は前を向いたまま少女は答えた。「記念撮影を」と、カメラを取り出すぼくに、少女は手をかざして嫌がった。諦めてそれをリュックにしまいながら、ぼくはどこかひっかかるものを感じた。小さな窓から差し込む淡い光。 その光景はまるで印象画そのものだった。 静かで非現実的な感覚。カラダの部分部分が、順番に溶けていきそうなけだるさに襲われる。


目が覚めると、目の前に蜘蛛の巣からまる3つの電球が見えた。
「天井・・・?なんで天井なんか見ているんだオレは!?」
ざわわっと、言いしれぬ恐怖がカラダを走り抜ける。
「いつの間に眠ってしまったのだろう?」ぼくはあわてて上体を起こす。 反射的に右手を胸に当てた。パスポートや現金は首から下げた袋に入れていたはずだ。「袋は、あった・・・」、安心したのもつかの間、ぼくはシャツもジーンズも、大きくはだけていることに気がついた。まるで、手術台の患者のように。
「なんだなんだなんだなんだ!?」
少女がそばにいた。 水色のワンピースはそのままだが、さっきとどこか違う。「じっ」とこちらを見ている彼女の眼球には光りがあった。視線がかち合う。
「コイツ、盲目なんかじゃない!」
思えばカメラを向けたとき、彼女は嫌がったのだ。なぜあのとき、気づかなかった?ぼくは少女をつきとばし、ズボンをブザマにずり上げながら、部屋から飛び出る。「リュックは?」 リュックは元の場所にあった。さっきまで食事をしていたテーブルのそば。 あわててそいつを掴み、出口へと走り出す。床がきしんでひどくうるさい。無我夢中だった。スニーカーのヒモがほどけているのが見えた。ドアチェーンを、がちゃがちゃともどかしく外し、ドアノブにかけた手に力を入れようとしたその瞬間!

ガーン!!
背中にショックが走った。鈍い音、何かが割れる音、振り向くと恐ろしい形相をした"アイツ"が木の棒を振り下ろしたところだった。その棒はぼくのリュックに食い込む。
言いしれぬ「殺気」を感じた。



外へ飛び出すと、転げもつれるように木の階段を駆け下りた。スニーカーはいつの間にか履いていない。何か叫ぼうとしたが声は出ない。「殺される!」と直感し、ぼくは恐怖のどん底であえいだ。
アパートを飛び出し、目についたメトロの入り口へ向かって駆ける。途中何度かヒトとぶつかりながらも、ばたばたと階段を駆け下りる。"アイツ"はもう追っては来ないだろう。さすがに人目につくようなことはしないはずだ。 ぼくは試しに、さっき駆け下りた階段のほうに目を向ける。
ばたばたばたばたぁっ・・・・!
と、こちらに向かって走ってくる"アイツ"の姿が目に入った。ふたたび恐怖に襲われる。"アイツ"は何か周りに叫んでいる。フランス語なのでわからない。気持ちの悪い声。しかしこともあろうに、周りの人間がぼくを取り押さえようと近寄ってくる。
「なんだあ!? 被害者はオレだぞ!」
切符なんて買っているヒマはない。ぼくは改札を跳び箱のように飛び越えホームへと走る。 そして、ちょうどそのときホームに滑り込んできた地下鉄に飛び乗った。どっちの方向だろうとかまわない。
動き出した地下鉄。 安堵感に包まれる。 けれどもカラダはがちがちと震えたままだ。乗客が、不審そうにボクを見ている。 気づくと上半身ははだけたまま、ハダシのまま、おまけにのジーンズのチャックは全開で、トランクスの一部がはみ出ていた。 後頭部に軽いしびれ・・・。きっと睡眠薬を飲まされたに違いない。今にして思えばあのワイン、ざらざらと妙な味がした。

それにしても、ぼくは何をされようとしていたのだろう?
睡眠薬の量が、もう少し多かったら、ボクはどうなっていたのだろう?
しかし今のぼくの格好、
「婦女暴行未遂の犯人」、そのものじゃないか・・・。
他人に無関心なフランス人、しかし一部の人間はまだこちらを見ていた。


でも長くなったので、残りの2話はまた今度!気が向いたらね。



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『香港最強ブログ委員会』第一回会合

さて、楽しかったGWも終わってしまいましたね。 みなさま、今年はどんなGWをお過ごしだったんでしょう? 精根尽き果てて、「5月病」とかになってませんか?まあ、ぼちぼちカラダを仕事モードに慣らしていきましょう。
さて、先日の記事で、「参加者」を公募したところ、これまで予想以上の方に、コメント欄またはメールにて「参加表明」していただきました。 この場をお借りして、まずは感謝の意をお伝えします。 この、「第一回会合」は、5月15日(日)に、開く目処で進めていますが、会場の確保その他準備もありますので、11日(水)でいったん「参加者」を締め切らさせていただきます。「参加したい」けど、まだ「表明してない」って方、まだ間に合いますからどうぞご連絡を。

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