ゆるい人々

コーズウエイベイは狂い咲き

香港の海外駐在員。
なかには「豪華マンションに、待つ人もいない」単身赴任者もいる。
家族を残している日本の家では、「靴下のありかさえ知らなかった」お父さんのことだ、奥さんはさぞ心配であろう。
が、心配はいらない。
お父さん達は、ちゃんとやってる。
やりすぎるくらい、やっている。
ここは香港有数の歓楽街、銅鑼灣。ひとり暮らしの成果もあり、自分でちゃんと靴下がはけるようになったお父さんたちは、今夜も「仕事だから」とスタッフに言い残し、さっそうと「夕暮れ出勤」。
その職場とは、もちろん、『フィリピンパブ』である。
ここはつくづく異空間。 日本にも、香港の他のナイトクラブでも、いやひょっとしたら、マニラですら見られない光景が、連夜くり広げられている。ぐぐっとお股も広げられている。
「ここんとこ接待が続いててねぇ・・・」 昼間のお父さんたちは、どこか物憂げだ。 実際、二日酔いの様相でもある。じゃあ、何が原因で頭痛を病み、だのになぜ、夕暮れになるとこうも楽しそうなのか? 本日の「イラ写」では、それを明らかにするべく、お父さんを尾行しフィリピンパブへと突入してみた。


そこで、ぼくが見たものは・・・・!?



▼ (その一) ネクタイ特攻隊

誰にリクエストされるわけでもないのに、「つい」頭にネクタイを巻いてしまうの、なんでだろう? 新撰組か、全学連か、はたまた特攻隊か? 日本人のDNAに染みついた「はちまき癖」は、こんなところでも遺憾なく発揮されている。 たまに、「80年的ワンレン女子大生のまねー♪」などと言って、横に垂れたネクタイをかき上げてみせるのだが、どうしても「武田鉄矢」になってしまうのが悲しい。

▼ (その二) あっちむいてホイ

「じゃんけん、ぽい!」、「あっちむいてホイ!」 昼間は決してみせることのない笑顔で、お父さんたちは「オネエちゃん」を前に、幼少時代に戻る。 しかしここでは、「お客さんが勝てばオネエちゃんは一枚脱ぎ」、「オネエちゃんが勝てばお客さんは一杯呑む」という、幼少時代は禁断であったルールが、ここでは新たに書き加えられている。 しかし「オマエが脱いでしまうのかよ!」的に、お客さんもなぜか脱ぎたがる。そして場違いなランニングシャツから突き出たお腹、そこに、少年時代の面影はとっくにない。

▼ (その三) 仮面ブラジャー

ひとしきり「あっちむいてホイ」や「野球拳」で、さわやかな汗を流したお父さんは、お気に入りのデュエットでも歌おうと、オネエちゃんの手を引いてステージに上がる。暑いからか、肝臓を気遣ってなのか、「呑むところを脱いでしまった」お父さんたちは上半身裸だったりもする。 戦利品のブラジャーがちょこんと頭に乗っている。

▼ (その四) VIPルーム

「大事なお客様」の接待では、デリケートな話題も多い。 香港のフィリピンパブの客は、なぜか全員日本人なので、まわりの耳も気になるところだ。 VIPルームの密室はこんなとき、ありがたい。
しかし、せっかくのVIPルームも、肝心なお話がぜんぜん進まない。いったいデリケートなお話はどこへいってしまったのか?
「シャチョーさん、ダンス踊ろう!」
しかし、シャチョーさんたちは踊らない。下から見ているだけだ。「ショー・タァイム!」こうして、エスカレートしたオネエちゃんのパンツがひらりと宙に舞い、かぶりつくシャチョーさんのバーコードに引っかかることも、たまにある。

▼ (その五) 狩猟ダンス

「あっち向いてホイ」でテキーラ1本空けながらも、ようやく奪ったオネエちゃんの衣装。お父さんたちの中には、その衣装を自ら着用したがる趣味を持つ人もいる。 きっと、捕った獲物の毛皮をその身にまとう"狩人"の気分になってしまうのだろう。 そんな狩人な上司を持つ部下も、やはり"狩人"になってしまっている。誇り高い夜の狩猟民族たちは、身にまとった毛皮でダンスする。 しかしそこには血の匂いはなく、平和だが、ゆえにさめざめともの悲しいオカマショーになってしまうのだ。
上司に誘われ、ダンスに加わる部下。

翌朝二人は、いったいどんな顔して会社で会うというのか!?



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