バレンタインデー

naokin_hk2005-02-14

ここ香港のバレンタインデーは、「男性から女性に花束を贈る」というのが慣習。 まあ、バレンタインデーでなくても香港の男性は女性に実にいろんなものを貢ぐので、この日を選ばずともいいのでは?と思ってしまうんだけど、そうはいかない。 これは香港女性の自尊心をめぐる戦いでもあるから。

朝、この日ちょっと遅れ目にオフィスに行くと、部屋に入ったとたん、いっせいに女性スタッフたちの顔がこちらに向けられる。 そしてぼくだとわかると、「なぁんだ・・・」といった表情で元の姿勢に戻っていく。 これはバレンタインデーのオフィスのありふれた光景だ。 そう、オフィス彼女たちは自分に届けられる花のデリバリーを待っているのだ。 たとえ、自分に花を贈ってくれる男性に心当たりがなかったとしても、花屋のデリバリー兄さんはこの日、恋する乙女たちのサンタクロースになる。

「花なんて直接相手から渡された方がうれしいんじゃないの?」
心ない日本人は彼女たちにそう問いかける。もっともな意見だが、それは間違いだ。彼女たちはみんなが見ている前で花屋から花束を受け取り、それを勤務中自分の机の上に飾れることを誇りにしているのだ。「私ってば、ダーリンにこぉーんなに愛されてるのよ。」それは他人が見ている前でこそ、効力を発揮する。そして、その時間は長ければ長いほどいい。
「なんでもっと早くデリバリーしてくんなかったのよ!」退社時間まぎわになって花束を受け取った女の子は、デリバリーマンにそう毒つく。たぶん、それを贈ってくれたダーリンにはこのあと、さらにきつく、とても辛辣に、クレームするのだろう。

そんなわけで、この日香港のオフィスは、まるでお彼岸時の墓場のように花が乱立することになる。花がジャマで、とても仕事がやりにくそうだけど。
この花束、ラッシュ時の電車内ではものすごくジャマだし、"ぶっちゅーっ"とか音を立ててキスをされるのはもっと迷惑だが、香港人にとって、『互いの愛情表現』はギャラリーがいてこそ成り立つのだろう。