仕事中のランチタイム

カウンター越しに麺をすする人々

週末旅行でもしようかと、格安ツアーをあつかうローカルの旅行代理店に赴く。
ランチタイム直後(2時過ぎ)だったので、「きっと、混んでるだろうなあ・・」と覚悟していたにもかかわらず、店内はがら空き、ていうか、お客はぼくひとり・・、だけかよ! 正面のカウンターをはさんで、スタッフがずらーっと10人ほど並んでおり、口々に「いらっしゃいませ!」と声を掛けてくる。ぼくはちょっとたじろいだが、とりあえずど真ん中にいる感じ良さそうなお兄ちゃんの前に腰掛けることにした。
ひととおり行き先も決まり、フライトの空き状況を確認してもらっていたそのとき、その事件は起こった。
背後のガラス扉が開き、初老の男が入ってきた。白いコック服をまとい、両手にビニール手提げ袋をぶらさげている。そして、おもむろに中に入っている白いプラスチック丼をカウンター越しのスタッフ全員に配り始めた。ぷ〜んと鼻につくスープの匂い。「出前・・・!?」そう、旅行代理店の人たちはこれからお昼ご飯だったのだ。しかも全員そろって・・・。
とたんに店内に充満する中華香料の匂い、カレー粉の匂い、牛骨スープの匂い・・・熱いスープの蒸気。やがて・・・、
「ずず・・・!ずずぅっ」
「べっちゃくっちゃ・・・」
「じゅるっ、じゅるっ・・・」
「くっちゃ、くっちゃ・・・」
例によって、食べ音の大合唱が始まる。そんな中、目の前の兄ちゃんは、平然とツアー内容について説明を続けている。「・・・で、空港までホテルからリムジンが手配されます・・・全日朝食付きで・・・。」
ああ、食べる音がうるさくてよく聞こえない!
どこかで電話が鳴っている。ひとしきり鳴ったあと、ようやく一人が口をぬぐいながら電話口にでる。(あのー、このかた、口の中にものが入ったまま応対していますけどー。)こうして正面の一人を除き、右に4人、左に5人、ずらりと並んで麺をすする人たちを、カウンター越に向かい合う自分。あっちとこっちで立場が逆な気がするけど、ここはいったい・・・!?
「すいませーん、ここ、旅行代理店のはずなんですけどー。」


「ぼく、ラーメン屋の親父になってますけどー。」(ヽ(゜Д゜)ノ)


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