大英帝国のボヤきクセ

油断ならない男だが・・

ぼく達の経営する会社は東京にあるので、香港のオフィスは提携会社にいわば「間借り」している状態。 その会社は香港島ワンチャイにあって、CEO(経営責任者)は英国人。アジア滞在延べ20年のベテラン(何の?)だ。たまに2泊3日くらいで、故郷のノーウィッチへ一時帰郷したりする。(短かすぎないか?) しかしこの男、普段から英国人特有のパンチの効いたセリフを吐きまくるから、油断ならない。
ある日、客先からクレームを矢継ぎ早にうけ、かなり凹んでいると、
「どうした? 恋でもしたか?」
と肩をぽんとたたいて親指立てる。逆に、ようやくプロジェクトが一段落し、大喜びしてると、
「両親ハッスルして、弟でもできたか?」
と、顔も向けずに言う。
植民地経営数百年の歴史を持つ英国の落とし子だけある。

一緒に中国へ出張に行くと、彼はいつも何かとボヤいている。乞食を見てはボヤき、タクシーの運転ぶりにボヤき、出された料理にボヤく。社員の履く白い靴下にボヤき、ボヤボヤしている受付嬢にボヤく。気持ちはわかるが、黙ってボヤけよ!ってな気分だ(オマエもな)。
「まったく中国人ってヤツはどうしようもないなあ・・・」彼は天を仰いでボヤく。まるで雨を呪っているかのようだ・・・。
「あんたの先祖、よくホンコン統治*1してたよなあ」
と、隣でぼくも毒づいてみる。
「おまえの先祖だって統治してたじゃないか。4年*2ぽっちだけど。」
ぼくは少しだけムッとして、「ヘイ・・・」と訊いてみる。「なんで、そんなにキライな香港に住むことにしたんだ?」


「うちの政府が手を引いたら、いったい誰が後の面倒を見るんだ?」


この男、やっぱり油断ならない。


  • [アナタのオフィスにも油断ならない人いませんか? ランキング応援、ありがとうございます]
  • *1:【1842〜1941年, 1945〜1997年】アヘン戦争の結果により南京条約にて香港はイギリスに割譲、統治された

    *2:【1941〜1945年】つまり日本は英国と共に香港を統治していたという、共通歴史がある。なお、日本軍による香港占領中、軍政庁はあのペニンシュラホテル置かれていたという