「憎しみの連鎖」と「誇り」

「反日記事」をのぞき込む二人

昼食時間のこと。
誰かが昼食とりつつ読んでいたのだろう、会議室に新聞が読み捨ててあった。「日本、歴史を改ざん!」なんて文字がちらりと目に入る。 その下におなか丸出しのおっさんの写真。 よく見ると「韓国の日本大使館前で、一人の男が抗議の割腹自殺をしようとし、警備員に取り押さえられる」と書かれているようだ。おっさんの手にはナイフが握られている。
ぼくはコーヒーカップを新聞の横に置き、その記事のページだけ、はずして広げた。
「ご苦労なことだなあ」と思う。 たかが、隣国の歴史教科書が気にいらないという理由で、公衆の面前に自分の「はらわた」を出してみせるのだ。 しかし、その「たかが・・・」がゆえに、彼の家族は、夫ないし父ないし息子を失なう。

「日本の常任理事国入り」をめぐって議論が沸騰しているという。 アメリカとフランスは賛成を表明し、ロシアは曖昧な態度。 「えーっと、イギリスはどうなのだろう?」 仕方がないので"ヤツ(注:英国人CEO、詳しくはここを)"に訊いてみると、「常任理事国?*1 まあ、いいんじゃないの?」のことだった。 これに対し、はっきりと反対を表明しているのは韓国と中国と北朝鮮。 その理由がこの、「歴史教科書の改ざん問題」と、「領土問題(竹島尖閣諸島)」だそうだ。 よくわからないが、彼らにもいろいろと都合があるのだろう。
「日本が常任理事国」になることがいいことなのか、そうでないのか、ぼくにはもっとわからない。 常任理事国でない今も、国連全予算の20%近くを日本は負担している。*2常任理事国なんかになったら、親分気取りで「よっしゃ、よっしゃ」ともっと払ってしまいそうでコワイ。
パソコンでソリテアをやっているアンドリュー(香港人スタッフ)に、「これってどうよ?」と、先ほどの新聞を見せる。 彼は神妙な顔してそれを読んでいたが、ふと顔を上げぼくを見る。鼻毛が3本、びよんとのぞいてる。
「日本は、侵略の歴史を美化してるってあるけど、ホント?」と彼は言う。
「さあ? でも"我国は侵略ばかりしてました"とは教えないだろう、相手は子供なんだし」
彼は鼻毛揺らしながら首を左右にかしげていたが、興味なさそうに再び画面に顔を戻す。ぼくは新聞を会議室に戻してから、自分の席へと戻る。
「自国を愛する心」それはそれで尊い。 「でも・・・」、とぼくは思う。
愛国心」ってなると、どこか胡散臭い。そして"きな臭い"。「愛国心」の向こう側に「憎敵国心」のようなものが見えるからだ。 行き過ぎた「愛国心」は、ゆえに「抗議のハラキリ自殺」を誘発し、欲しかった日本製品を買えなくする。 「愛国心」と「憎敵国心」とはまた、互いに比例するらしい。軍隊ではまず「愛国心」をみっちり教育される。 でないと、ドンパチ始まったときに、「敵国人」を殺せないからだ。
中国や南北朝鮮では、当たり前のように「愛国心」のモノサシを「反日」で計ってしまう性癖がある。 確かに「国旗を燃やそうが」、「日本製品をたたき壊そうが」、「日本人留学生に暴行をはたらこうが」、自分は攻められないし責められない。 それどころか「町の英雄」にだってなれる。「あいつは愛国心があるよなあ」と。

祖国を愛するならまず、税金をきちんと納め、道に痰を吐かなければいい。「焼いた旗やプラカードは、ちゃんと掃除して帰れよ」と思う。「他国の教科書で、自国の都合の悪いことが記されてる」と聞いただけで、日常を放棄し、自殺しようとする。 日本製品が置いてあったというだけで、同胞の経営する店を襲撃する。 彼らは一様に自分たちを「被害者」だと思っている。また、「誇り」を傷つけられたと思いこんでいる。こういっちゃなんだが、そんな「誇り」はもともと有りはしなかったはずだ。そもそも、彼らは「日本の歴史教科書」なんて読んですらいない。
「被害者妄想」から「被害者暴走」へ。
愛国心」を触媒とする憎しみの連鎖は、「自国の誇り」にはつながっていない。
そんな「中国人」や「韓国人」に対して、競うように罵声を浴びせる我々日本人。「けしからん!」、「こらしめてやれ!」とアジる。
そんな「日本人」もまた、憎しみの連鎖の一部となる。
「被害者暴走族」に対しては「相手にしない」のもまた、勇気だ。それは「自国への誇り」につながっていると、ぼくは思う。
毅然とした態度で、日常を楽しんでいれば、それでいい。



「今日の日誌、"イラ写"っぽくないな」と思いつつ、ブログランキング

▼ 今夜のメニュー 『からすみパスタ』

たまにコメントしてもらっている"うらっちさん"から「台湾みやげ」ということでいただいた「からすみ」。 さっそくパスタにしていただきました。 火であぶってかりっとなった「からすみ」を細かく崩してオリーブオイルとニンニク、鷹の爪を加えて炒めます。 そこに固めにゆでたパスタを放り込み、チキンコンソメの素で味を調えます。 仕上げに「もみのり」をぱらりとね。 断言していい。 「からすみ」はパスタとからめるのが、一番おいしい食べ方です。うらっちさん、どうもありがとう!
「国家太平」を語る前に、「おいしいごはん」が食べれる幸せが大事かも!?です。

*1:英語では、a permanent member of the (United Nations) Security Council.日本はいまだにドイツやイタリア、ルーマニアら6カ国と共に「敵国条例対象国」に含まれる。つまり、"Security Council"に監視される側にあるわけです。

*2:2003年時のデータ。ちなみに、常任理事国である英国は5.5%、フランスは6.4%、中国が1.5%、ロシアは1.2%。最後の2カ国にはとくに、「軍事費をこちらにまわせば?」と思ってしまいます。