女性のプライド

中国人女性スタッフの話を聞く

「彼は、空っぽな人なの」

以前、日頃からお世話になっている中国側パートナーのスタッフたちと、食後軽くホテルのラウンジで飲んでいたときのことだ。 米国の留学経験もあり、優秀な女性スタッフのひとりがぼくに、そういってみせた。 リラックスしたせいか、仕事の話題がそれてから久しい。 彼女の言う「彼」とは、「夫」のことだ。 カルフォルニアで知り合い、帰国後結婚したのだという。

「夫はとてもやさしい」と認めつつも、"Empty"なのが気に入らないという彼女。 「中国人の男は、相手の思い通りにすることが"やさしさ"だと思ってるのよ」 と、そう続ける。 同じテーブルにはぼくの他に3人いるが、他の話題に夢中で、わあわあと北京語でがなり立てている。 彼女の話には、関心を示す気配すらない。 彼女は彼女で、きっとぼくが外国人だからこんな話をするのだろう。
彼女の旦那様は、やさしい上に背も高くハンサム、かつ外資系会社に勤めているそうだ。 (中国では、「外資系 = 高収入」という暗黙の了解がある) 「つまり自慢したいのかな?」、とぼくは思った。 しかし彼女はそのつもりはないようだ。

「結婚生活を続けるためには、"尊敬"がないとダメなの」

そう言い、彼女はタバコに火を付けた。 彼女がタバコを吸うなんて初めて知った。

「友達や親戚に彼を紹介すると、みんなうらやましがるから、そのときは良い気分になることが出来る。 でもね・・・」
彼女は1cmほどタバコを吸ってから、それを灰皿でもみ消し
「尊敬できない人と一緒にいると、疲れるの」
という。

彼女の言う"GENTLE"の意味をぼくは測りかねていたが、続いて"RESPECT"の解釈にもとまどうことになった。
夫の「優しさ」を「空っぽ」だと言い、「尊敬できない」でいる妻、しかし一方で、周りの人達に「羨まれている存在」である夫婦。

誰が聞いても「贅沢な悩み」だと思いはしても、ぼくは彼女が言わんとする意味がわかるような気がした。 「妻の思い通りになる夫」というのは、ぼくもどこか腹に染みてこない。 まるで「簡単にクリアできるTVゲーム」のようじゃないか。 結婚生活はもちろん、「ゲーム」ではない。 要するに彼女は、「プライド(自尊心)」のことを言いたかったのだろう。

彼女の夫はいつしか、「優しさ」を「易しさ」と勘違いしてしまったのかもしれない。 それに気づかなければ、彼は「どうして妻が自分といることに疲れてしまうのか」 永遠に理解できないだろう。
それどころか、「疲れた彼女」を気遣うあまり、もっと「易しく」なってしまうかもしれない。

香港では、カノ女のハンドバッグまで持ってあげてるカレ氏くんや、一日に8回もオフィスに「ラブコール」をするカレ氏くんを見かける。それの善し悪しはともかく、ぼくにはぜったいムリだなあと思う。 そんな「ふるまい」で満足するほど、「女性のプライドは甘くはない」と思っているからだ。


「プライド」は"EASY" でない。「見栄」とはその辺が違うのだ。





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